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SWANSONG スワンソング ウド・キアー主演作品

それでも人生は素晴らしい 人生に悔恨を残さぬために、伝説のヘアメイクドレッサーが親友のための最後のメイクへ― 実在の人物をモデルにしたハートフル・ロードムービー!

ゴージャスに生き抜く。華麗に羽ばたく。

ロッテントマト 93% FRESH!(8月2日現在)
Filmarks映画初日満足度ランキング 第3位
著名人コメント!
8/26(金)シネスイッチ銀座、シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
2021年/アメリカ/英語/105分/カラー/ビスタ/原題:SWAN SONG/日本語字幕:小泉真祐/配給:カルチュア・パブリッシャーズ (C)2021 Swan Song Film LLC

INTRODUCTION

誰もが向き合う人生最後の決断を胸に、白鳥は飛び立てるのか?勇気や愛に後押しされ、人は人生を歩み続ける―。

 ヘアメイクドレッサーとして活躍してきたパトリック・ピッツェンバーガー、通称“ミスター・パット”にとっての「スワンソング」は、はたしてわだかまりを残したまま亡くなってしまった親友であり顧客のリタを、天国へと送り届ける仕事になるのか? 
 ヘアメイクの現役生活を遠の昔に退き、老人ホームでひっそりと暮らすパットは、思わぬ依頼を受ける。かつての顧客で、街で一番の金持ちであるリタが、遺言で「パットに死化粧を」とお願いしていたのだ。リタの葬儀を前に、パットの心は揺れる。すっかり忘れていた生涯の仕事への情熱、友人でもあるリタへの複雑な思い、そして自身の過去と現在……。

 ゲイとして生き、恋人との生活も送ったパットだが、最愛のパートナー、デビッドを早くにエイズで失っていた。リタの遺言によって、パットにはさまざまな思い出が去来していく。人生の最後に、人は何を残すことができるのか? そんな疑問に突き動かされるように、老人ホームを抜け出したパットが、多くの人と出会い、過去の自分と向き合うことで決意を固めていく。それは、ささやかな決意かもしれない。しかし、いつか誰もが向き合うことになる、人生最後の決断でもある。
 何かと話題になる「終活」というトピックを描くのはもちろんのこと、多くの人が人生で迷いを感じた時に背中を押してくれる、そんな勇気を与える感動作、それが『スワンソング』である。

実在の人物をモデルにしたハートフル・ムービーの誕生!

 パトリック・ピッツェンバーガーは実在の人物がモデル。監督のトッド・スティーブンスは17歳の時にオハイオ州サンダスキーのゲイクラブで、ミスター・パットが踊っているのを見て、衝撃を受けたという。映画の道へ進んでから、いつか同郷のこの人気ヘアメイクドレッサーを題材にしたいと思い続け、その念願を叶えたのだ。自身もゲイであるスティーブンス監督による本作は、エイズが蔓延した1990年の時代から現在に至るゲイカルチャーを真摯に見つめ、ゲイカップルの描き方にも愛が満ちあふれている。社会的な立ち位置や相続問題などリアルなトピックも物語に取り込むことで、LGBTQ+映画の一本として、この『スワンソング』は誠実な仕上がりが達成された。

パットを演じるのは映画界の秘宝、ウド・キアー。まさにスワンソングともいうべき新境地!

 自身の内面と葛藤しながら、観る人に感情移入させる、まさに俳優冥利につきる主人公のパット役。これを託されたのは、ドイツ出身でハリウッド作品でも活躍する世界的名優、ウド・キアー。初期の『悪魔のはらわた』から、近年はラース・フォン・トリアー作品まで怪優ぶりも発揮するキアーが、その強烈な個性はそのままに、人生最後の仕事への逡巡をエモーショナルに表現。時には激しく感情をあらわにして、時には静かに哀感を漂わせ、共感を誘う名演技を披露する。共演は『プロミシング・ヤング・ウーマン』のジェニファー・クーリッジ、TVシリーズ「アグリー・ベティ」のマイケル・ユーリーら。ユーリーはゲイであると公言した俳優、TVプロデューサーとしても知られる。

 この『スワンソング』は、サウンドトラックも魅力。「あなたしか見えない」という日本語のカバー曲も生まれた、メリッサ・マンチェスターの「哀しみは心に秘めて(Don’t Cry Out Loud)」をはじめ、ジュディ・ガーランド、シャーリー・バッシー、ダスティ・スプリングフィールドなどの名曲が使われるのだが、その歌詞がストーリー、およびパットの心情に見事にシンクロしている。観終わった後も、歌詞とメロディが頭の中でリフレインするという、ニードルドロップ(既存の曲を映画音楽に使用すること)の成功例と言える一作だ。

 人は誰もが年齢を重ねる。そして時代とともに社会や生き方、価値観は大きく変わっていく。その中にあって、不変な何かもある。
自分の使命が終わったと思っていたパットがもう一度、実力を示そうと決めたように、命が続く限り、人は新たな出会いと発見を繰り返し、希望を見出すことができる。そして知らず知らずのうちに、誰かの人生を変えることだってできる。
 『スワンソング』は、観る人すべてが“変わる”ポテンシャルをもった映画である。

STORY

ゴージャスに生き抜く。華麗に羽ばたく。

 オハイオ州の小さな町、サンダスキーの老人ホーム。
 パトリック・ピッツェンバーガー(ウド・キアー)は、静かな余生を送っていた。ホームの職員から何か注意を受けても聞き流し、日課といえば食堂の紙ナプキンを自室に持ち帰り、丁寧に折り直すことくらい。しかしパトリックの心には過去の思い出がつねに去来していた。ヘアメイクドレッサーだった彼のサロンは街でも大人気。「ミスター・パット」と呼ばれ、顧客から愛されていたこと。そして愛する恋人デビッドとの生活と、早くに彼を失ったこと……。

 そんなパットを、ある日、弁護士のシャンロック(トム・ブルーム)が訪ねて来る。かつてのパットの顧客で、街でも一番の金持ちであったリタ・パーカー・スローン(リンダ・エヴァンス)が亡くなったというのだ。リタは「死化粧はパットに頼んでほしい」と遺言書に残していた。シャンロックによると、その報酬は2万5000ドルだという。驚くパットだが、リタへの複雑な思いや、すでに現役を引退した現実から、「ぶざまな髪で彼女を葬って」と言い捨て、申し出を断ってしまう。

 しかしパットはリタの遺言に動揺を隠せない。思い出の写真やジュエリーなどを久しぶりに手に取って眺めるうちに、輝いていた時間に思いを馳せる。そして同じホームに暮らす女性の髪を美しくセットし、自分の腕が衰えていないことにも気づく。本能に突き動かされるように、パットは老人ホームを抜け出すのだった。

 街の中心部までの長い距離を歩き続けるパット。デビッドの墓も訪ね、行く先々の人たちとの出会いを通し、リタの遺言を叶えてあげたい気持ちが芽生えいく。しかし、以前に暮らしていた街は様変わりしていた。デビッドと暮らした家の場所へ行くと、そこは更地になっており、新たな所有者に尋ねたところ、元の家に残っていたものはパットの帽子だけだと知らされる。エイズで亡くなったデビッドは遺言書を残しておらず、土地の抵当権は親族の甥に引き継がれていたのだ。

 リタの孫ダスティン(マイケル・ユーリー)とも会い、改めて協力を求められたパットは、弁護士のシャンロックの元へ向かい、リタのメイクアップを引き受けると伝える。道具を揃えるために前借りを頼むパットに対し、シャンロックはポケットマネーの20ドルを手渡すが、パットは現金をすぐにカフェのワインで使い切り、化粧品は万引きで調達する。しかしどうしても必要なヘアクリームだけは手に入らなかった。時代遅れとなったその商品を扱っていたのは、街でも人気のヘアサロンで、かつてパットの元で働いていたやり手のディー・ディー(ジェニファー・クーリッジ)の店だった。ディー・ディーと言い争った末に、パットはそのヘアクリームを貰い受ける。

 リタのメイクアップへの準備は整いつつあったが、老人ホームから出てきたジャージ姿で向かうわけにもいかない。パットは小さなブティックに立ち寄ると、偶然にも店主は、パットのヘアサロンに一度だけ来たことがある女性だった。パットも彼女を覚えており、感激した店主は「いつか似合う人が現れると思って取ったおいた」というグリーンのスーツを彼にプレゼントする。自分にぴったりのスーツに満足し、ドラァグクイーンとしてステージにも立った懐かしのゲイバーも訪れるパット。やがて意を決して葬儀場へ向かうが、最後の最後に、彼の心は揺れ動くのであった――。

PROFILE

  • TODD STEPHENS 監督・脚本:トッド・スティーブンス

    アメリカ・オハイオ州サンダスキー生まれ。音楽を担当したクリス・スティーブンスは弟。『Edge of Seventeen』(98)で脚本と製作を担当。『Gypsy 83』(01)と『Another Gay Movies』(06)では、脚本・製作・監督を担当した。以前の作品4本すべてが数多くの映画祭で賞に輝き、世界中で劇場公開されている。現在、ニューヨーク市にある芸術大学スクール・オブ・ビジュアル・アーツで映画学科の教授を務めている。

  • CHRIS STEPHENS 音楽:クリス・スティーブンス

    サンダスキーに生まれ育つ。監督のトッドは兄。初期のMTVビデオや兄たちのロックミュージックやニューウェイブを毎日聞きながら成長した。1998年、アナログシンセサイザー、モーグ・プロディジーと遭遇し、ますます音楽に傾倒していく。モーグは、兄トッド・スティーブンスの初めての映画『Edge of Seventeen』(98)の重要な小道具となった。この作品で仕事をしながら、夜はこのビンテージ物のシンセを家に持ち帰り、つまみのわずかなシフトで作り出されるパワーと微妙なサウンドに驚嘆したという。本作が長編映画の音楽を担当するデビュー作となる。『Edge of Seventeen』の撮影後、見つからなかったモーグ・プロディジーは、トッドのサンダスキー3部作の最終章となる本作の重要なシーンでその音を聴くことができる。

  • LYDIA KANE ヘアメイク:リディア・カネ

    オハイオ州出身のフィルムメイカー。ドキュメンタリー『Spirit of The Game』(12)と『Lucas County Human Trafficking Coalition』(13)は世界中の映画祭で上映された。脚本家としても活動し、出品脚本がスクリプト・ラボ・スクリーンプレイ・コンテストとオースティン映画祭で準決勝まで残るという経験を持つ。また、メイクアップと特殊効果アーティストとして映画界で仕事をしている。その作品には、『ホワイト・ボーイ・リック』(18・未)、『ラスト・サマー ~この夏の先に~』(19・未)、『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(21・未)などがある。

  • ウド・キアー

    UDO KIER パット ウド・キアー

    1944年10月14日、ドイツのケルンで生まれた。病院は爆撃され、赤ん坊だった彼と母親は瓦礫の中に埋まってしまうという辛い経験を持つ。青年時代には英語を勉強するため、ロンドンに移住。ロンドンでマイケル・サーンに見出され、短編『Road to Saint Tropez』(66)に配役され、ジゴロ役で映画デビューを飾った。その後、マイケル・アームストロング監督の『残酷!女刑罰史』(70)に出演。そして、ポール・モリセイ監督の『悪魔のはらわた』(73)と『処女の生血』(74)、ダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』(77)、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『第三世代』(79)や『リリー・マルレーン』(81)そして『ローラ』(81)などの映画に続々と出演した。
    その後、ベルリン映画祭でガス・ヴァン・サントと出会ったのち、アメリカのインディペンデント映画の世界に参入。ヴァン・サント監督の『マイ・プライベート・アイダホ』(91/共演:キアヌ・リーヴス、リヴァー・フェニックス)に出演し、ランプをもちながら歌う男娼の客ハンス役を演じた。ヴァン・サント監督作品では『カウガール・ブルース』(93)や『ドント・ウォーリー』(18)にも出演。さらに、『バラ色の選択』(93)、『エース・ベンチュラ』(94)、『JM』(95)、『バーブ・ワイヤー/ブロンド美女戦記』(96)、『エンド・オブ・バイオレンス』(97)、『アルマゲドン』『ブレイド』(共に98)、『エンド・オブ・デイズ』(99)といった90年代ハリウッドヒット作に出演した。
    ラース・フォン・トリアー監督とのコラボでよく知られており、フォン・トリアー監督作品の多くに出演している。TV映画「メディア」(88)、『ヨーロッパ』(91)、『奇跡の海』(96)、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00)、『ドッグヴィル』(03)、『マンダレイ』(05)、『メランコリア』(11)、『ニンフォマニアック Vol.2』(13)、デンマークのTVシリーズだが劇場公開された『キングダム』シリーズ(94,97)などがある。
    また、アクティビジョンのビデオゲームシリーズ「コール・オブ・デューティ」(03~)でも記憶に残る役柄を演じている。ほかの映画作品には、『アイアン・スカイ』(12)、『デンジャラス・プリズン -牢獄の処刑人-』(17・未)、『ダウンサイズ』(17)、『アメリカン・アニマルズ』(18)、『バクラウ 地図から消された村』『異端の鳥』(共に19)、『The Blazing World』(21)などがある。

  • ジェニファー・クーリッジ

    JENNIFER COOLIDGE ディー・ディー ジェニファー・クーリッジ

    1961年8月28日、ボストン生まれ。ニューヨーク市にあるアメリカン・アカデミー・オブ・ドラマティック・アーツで学んだ。ロサンゼルスのコメディグループ、ザ・グラウンドリングスに9年間在籍。1999年のコメディ映画『アメリカン・パイ』でスティフラーのママを演じて以来、ハリウッドの主力女優として活躍してきた。ヒット作『キューティ・ブロンド』(01/共演:リース・ウィザースプーン)で演じたポーレット役は今でも愛され続けている。また、クリストファー・ゲスト監督と頻繁にタッグを組むことでもよく知られている。その作品には、『ドッグ・ショウ!』(00)、『みんなのうた』(03)、『For Your Consideration』(06)などがある。
    出演シーンでは主役を食うほどの人気女優でありコメディエンヌでもある。出演作には、『ズーランダー』(01)、『プーティ・タン』(01・未)、『シンデレラ・ストーリー』などがある。TVシリーズでは、「フレンズ」(94~04)、「SEX AND THE CITY」(98~04)、「NIP/TUCK マイアミ整形外科医」(03~10)、「アメリカン・ティーンエイジャー ~エイミーの秘密」(08~13)、「Party Down」(09~10)、「Glee」(09~15)、「Inside Amy Schumer」(13~16)などのエピソードにゲスト出演している。
    近作には、『コスメティック・ウォー わたしたちがBOSSよ!』(20・未/共演:ティファニー・ハディッシュ、ローズ・バーン)、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20/共演:キャリー・マリガン)、TVシリーズ「ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル」(21)などがある。

  • リンダ・エヴァンス

    LINDA EVANS リタ リンダ・エヴァンス

    1942年11月18日、コメティカット州生まれ。「バークレー牧場」(65~69)のアウドラ・バークレーから、「ダイナスティ」(81~89)の魅力的なクリストル・カリントン、そして2009年に優勝した料理を競うイギリスのリアリティ番組「Hell's Kitchen」に至るまで、50年以上にわたって、TV視聴者を魅了してきた。「ダイナスティ」では、ジョン・フォーサイス演じる石油王の妻クリストルの演技でゴールデングローブ賞TVドラマシリーズ最優秀女優賞に5回ノミネートされ、82年に受賞。ピープルズ・チョイス賞ドラマシリーズお気に入りの女優賞を5度受賞、エミー賞ドラマシリーズ最優秀主演女優賞には1度ノミネートされている。TV界への貢献を称えられ、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに殿堂入りした。

INTERVIEW

Q:ご自身の以前の作品がどのようにあなたを『スワンソング』に導いてくれたのか、聞かせてください。

『スワンソング』は、私にとって自身のシリアスな面に戻る作品なのです。『Another Gay Movies』(06)の奇抜な世界のあとで、私は自分のルーツに戻り、『Edge of Seventeen』(98)に始まり『Gypsy 83』(01)に続く”オハイオ3部作”として考えていたことを終わらせたいと思いました。でも正直に言うと、自分自身の個人的で自伝的な面を再び人前にさらす勇気を見つけるのに、数年かかってしまったのです。出だしで何度も躓いたけれど素晴らしいセラピストたちのおかげで、私はついに勇気を奮い起こし、自分の心を再び開くことができました。多くの意味で、パットというキャラクターは私自身です。自分が愛することをするのに遅すぎることはないと私に語り掛けてくれるのです。

Q:ウド・キアーを思い描いて脚本を書いたのですか?

「イエス」と言うべきでしょうが、じつは初稿を書いたときに頭に浮かんでいたのはジーン・ワイルダーでした。でも完璧なパットを探し求めて1年以上が過ぎ、パットの良さを十分に発揮できるのはこの地球上にたったひとり、ウド・キアーだけだとわかったのです。毎日セットで目撃するウドの演技は、まさに匠の演技そのものでした。

Q:この脚本に対するウドの最初の反応はどのようなものでしたか?

ウドはすぐに連絡してきて、とても気に入ったと言ってくれました。私はすぐに飛行機に飛び乗り、彼と会うためにパームスプリングスに向かいました。あとは御存知の通りです。ウドは親切にもこの映画をスタートさせるために助力を惜しまなかった。のちにパームスプリングスに戻って、彼の素晴らしいリビングルームで試作ビデオを撮影しました。『スワンソング』を作った最大のボーナスのひとつが、ウドと親友になれたことです。彼はもう家族です。

Q:アメリカの小さな町サンダスキーに引き付けられる理由について聞かせてください。

オハイオ州サンダスキーは、私が生まれ育った町で、これからも常に私という人間の大きな部分を占めることでしょう。何年にもわたって自分の故郷の町と愛憎関係にありました。去りたくてたまらなかったのに、今では戻りたくてたまらない。この町で1997年に『Edge of Seventeen』を撮影して以来、時代は変化してきましたが、映画のゲイのストーリーラインは隠しておく必要があるのではと感じていました。ところが、プロデューサーのエリック・アイゼンブレイとともに『スワンソング』のプリプロダクションを始めるために町に戻ったとき、サンダスキーは3回目のゲイ・プライド年次フェスティバルを祝っていたのです。私の中のクィアの部分は、どう考えたらいいのかわかりませんでした。何年も衰退したあとで、サンダスキーは再び目覚め、この映画のパットの復活を触発する手助けをしてくれたのです。

Q:生死にかかわらず、自分の葬儀に髪を整えてもらうなら、誰を選びますか?

もちろん、偉大なる故ミスター・パットですよ! でも映画が公開されたあと、彼のところは予約が殺到するでしょうから、次に選ぶなら、故シドニー・ギラロフですね。ハリウッドの天才ヘアスタイリストで、彼の作品がリンダ・エヴァンスの最後のスタイルにインスピレーションを与えてくれました。と言うのは冗談で、本当は、棺に入った私のヘアスタイルは夫のティムにお願いしてあるのです。私のスタイルを本当にわかっているのは彼だけですからね(笑)。

MESSAGE

 1984年、私は初めて故郷の小さな町にあるゲイバー、“ザ・ユニバーサル・フルーツ・アンド・ナッツ・カンパニー”に足を踏み入れた。そこに彼がいた。ダンスフロアでキラキラ輝いている。フェザーボアを首に巻き付け、柔らかなフェルトのつば広帽をかぶり、お揃いのパンツスーツを着た“ミスター・パット”・ピッツェンバーガー。まるでボブ・フォッシーの世界から抜け出したような動きで踊っている。17歳の私にとって、パットは神のごとく輝いていた。

 数年後、自伝映画『Edge of Seventeen』に着手しようと思っていた私は、すぐに“ミスター・パット”のことが頭に浮かんだ。彼のことを追跡しようと故郷に戻った私は、彼が動脈瘤を患い、一時的に話せなくなってしまったことを知った。だが、彼の恋人デビッドが私に物語を聞かせてくれた…。パットがかつてオハイオ州サンダスキーでどれほど素晴らしい美容師だったか、彼の有名な女装パフォーマンスについて、1970年代、彼がどんなふうにキャロル・バーネットのようなドレス姿でスーパーマーケットに買い物に行っていたか―。彼は、常に勇気をもって自分自身でいようとした。それが安全とは言えない時代でも。

 実のところ、“ミスター・パット”に刺激されて私は『Edge of Seventeen』を書いた。重要な“パット”のキャラクターを主人公の良き相談相手として書いていたが、撮影の途中でその役はカットされた。だが私はいつも、自分の女神をいつかはもう一度書くことになるだろうとわかっていたのだ。そして何年もあとに彼はついに戻ってきた。私はもう一度パットを探したが、彼が最近亡くなったことを知った。悲しいかな、パットの有名な手作りのラインストーンのドレスはすべて失われてしまっていた。ただ靴箱がひとつ残っていた。中には、いくつかの色あせた宝石と半分吸いかけの煙草がひと箱だけ。

 『スワンソング』は、急速に消えていくアメリカの“ゲイ文化”へのラブレターなのだ。クィアであることが以前よりずっと受け入れられてきた矢先に、昔栄えていたコミュニティが、あっという間に社会の中に溶けてなくなっていく。同化作用とテクノロジーのおかげで、“ザ・ユニバーサル・フルーツ・アンド・ナッツ・カンパニー”のような小さな町のゲイバーは消えていく運命にある。『スワンソング』を、忘れ去られたすべてのホモセクシャルのフローリストと美容師たちに捧げよう。彼らがゲイコミュニティを築き、私たちの多くが今日までしがみついてきた権利のための道を切り開いてくれたのだ。だが、何よりも、私にとってこれは、もう一度生きるのに遅すぎることは決してないということを教えてくれる映画なのだ。

著名人コメント
歳を取るのは悪いことではなく寂しいことだが、その寂しさこそが人生の妙味、美味を味合わせてくれるものなのだと、教えてくれる映画でした。
岩井志麻子(小説家)
ウド・キアー のあまりにもエレガントな振舞い。詩人ボードレール曰く「化粧とはその人が美に仕えることしかできないことを証明すること。一種の純粋さを持って身を曝け出すこと」。美に取り憑かれ、冥府をさまよう「ベニスに死す」の変奏であるこの物語が、それを証明してみせたわ。
ヴィヴィアン佐藤(美術家/ドラァグクイーン)
この映画は、ゲイの老人の可能性を輝きに変える方法を伝えている。結局若い頃に様々な経験をすればこその 物語。そう、人生って動いてる人が主人公なんだ。〝自分の時間〟を再び動かす事もできる、私たちはそう言う人に夢を見る。
オナン・スペルマーメイド(ドラァグクイーン)
誰にでも人生の最後はある。 有終の美を飾るにふさわしいドラマが散りばめられた珠玉の作品。観るもの全てに夢や希望、勇気を与えてくれる。この映画を見ずして棺おけには入れない!
假屋崎省吾(華道家)
例えるなら、ジェンダーと老人問題を扱った怪優ウド・キアー版「おくりびと」。しかしそれほど単純ではない。全てを壊す程に、ウド・キアーの好演が素晴らしい!!! こんなウド・キアーは観た事がない!悲劇でも喜劇でもない。人生の終幕に、悔恨と赦免を優しく描く、美しいウド・キアー映画。
小島秀夫(ゲームクリエイター)
生きているか死んでいるかどちらでも良い境地に達し、性別も超越しているパット。最高にかっこいい老後に憧れ、高齢化社会に希望を抱きました。
辛酸なめ子漫画家・コラムニスト
パットは親友リタへの葬儀が最後の死化粧、僕は妹への最初のメイクが死化粧でした。同じヘアドレッサーとしてとても共感のできる部分が多く、笑える所、そしてとても考えさせられる所が沢山ありました。時の流れとは素晴らしいところもあり、時には残酷な部分もあり、人生を謳歌して生き抜くとはなにか?何が自分にとって幸せか?幸せとは何か?を考えされられました。最後にパットが自分を奮い立たせてリタのヘアメイクをした時に胸が熱くなりました。僕も最後までヘアドレッサーとして生きぬきたいと思わせてくれる 素晴らしい作品でした。
奈良裕也ヘアメイクアップアーティスト
老いることは愛する人も友も華やかさも視える世界も全てを失っていくこと?いいえ、アタシたちは最期まで化けて笑って、プライドだけは遺すの。心の芯から震え続けた一生モノの作品を、どうか多くの孤独な星々に。
ブルボンヌ(女装パフォーマー)
一時代を築いたヘアメイクドレッサーのプライドと自信に、心打たれた。わたくしも、主人公のパットも、「しぶとく」生き抜いているところに共感。悔いなくやり遂げた人生は素晴らしい! もう一度観たい、いや何度でも観たい、人生の宝物。
美川憲一(歌手)
メイクアップアーティストの男が、古い親友のために最高に美しく、最高にド派手な死化粧をする旅に出る。このストーリーに惹かれて拝見しました。わだかまりばかりの人生の最後に、○印をくれることの幸せが溢れた映画でした。
三島有紀子(映画監督)
人生を振り返り、人生の終わりを考えた時、思わぬ依頼をきっかけに赴くままに動いていく姿に勇気をもらいました。そして、劇中で使用されている名曲の数々が、映画のシーンとシンクロしているのが見事でした。
八代亜紀(歌手)
忘れたことにした過去がどれだけあるか。本当は思い出せるかけがえのない時間が、どれだけあったのか。忘れたり、忘れられていると思っても、そこにあった人生を見た人がいる。美しさを覚えている人は必ずいるのだ。
ゆっきゅん(DIVA)
たおやかさとえげつなさを行き来するパット、最期の旅の景色はCampそのもの。古き佳きゲイカルチャーへの讃歌、そして『プリシラ』のテレンス・スタンプを彷彿とさせるウド様に感激!
よしひろまさみち(映画ライター)
(順不同/敬称略)